高圧噴射撹拌工法に使用するノズルの構造と性能向上に向けた当社の取り組み

1.はじめに
当社の地盤改良技術である高圧噴射撹拌工法に使用するノズルは、高圧水を噴射し地盤を切削・撹拌する上で心臓部ともいえる重要な部品です。ノズルの内部構造は、噴射する水流の形状や速度に大きく影響し、ひいては施工効率や改良体の品質に直結します。ここではノズルの構造や、性能向上に向けた当社の取り組みについて簡単に解説します。
 
2.ノズルの構造と性能への影響
ノズルの内部は、一般的に直管形状とテーパー形状の組み合わせからなり、入口から出口に向かって狭くなっています。この形状により、高圧の水を加速させ、地盤を切削する強力な流線の噴流を生成します。

図1 ウォータージェットノズル概略


 
流線  : ノズル内部が滑らかで研磨されているほど、噴射される水は乱れが少ない綺麗な流れを描きます。これは、ノズル内壁面との摩擦を最小限に抑えられることでスムーズに加速するためです。
ノズル長: ノズルが長いほど、水流はより安定し、高速度を得ることができます。しかし、配置スペースの制約などから、ノズル長を確保できない場合がほとんどです。
 
ノズルが短いと以下の課題が生じることがあります。
水流の乱れ   : 水流が十分に加速できず、乱れが発生しやすくなります。
圧力損失    : ノズル内での摩擦が増加し、圧力損失が大きくなります。
ノズル寿命の低下: ノズル内壁の摩耗が激しくなり、ノズルの寿命が短くなります。寿命とは単純な内部破損、もしくは内径の拡大によりこれまでの使用流量に対する圧力の低下を意味します。

 図2 高圧噴射撹拌工法における良いノズル・悪いノズル


 
3.性能向上に向けた当社の取り組み
高圧噴射撹拌工法は地盤に小さな孔を鉛直に掘削し、その孔に挿入した噴射装置から固化材等を水平方向に高圧で噴射することで大きな径の改良体を造成することが最大の利点です。従って、使用する噴射装置自体が細く内部も狭隘なため、必然的にノズル長が制限された中で高い性能を発揮する必要があります。そのため当社では流体力学的な視点から、ノズル配置に条件の厳しい状況においても性能を最大限に引き出すため、以下の取り組みを行っています。
 
①   ノズル形状の最適化 
耐摩耗性材料の選定:ノズルの素材に耐摩耗性材料を使用することで、ノズルの性能低下を防ぎ、寿命を延ばします。
 
表面処理:ノズル内壁を鏡面仕上げすることで、水流との摩擦を最小限に抑えます。
 
シミュレーション技術の活用:
流体力学に基づいた解析で、ノズル内壁の形状を最適化し、水流の乱れを抑制します。また噴射後の流体挙動も解析し、最適な設計にフィードバックします。

図3 噴射後の流体挙動のシミュレーション


 
入出口の形状: シミュレーション結果をもとに入出口形状を工夫し、実際に噴射試験をおこなうことで、水流の集中度を高められることを確認し、地盤の切断能力の向上を図ります。
 
圧縮空気噴射の組み合わせ:地盤中でのウォータージェットは、地下水等で満たされた中での噴射となるため、そのままでは急速にエネルギーが減衰します。そこでノズルの周囲から圧縮空気を噴射し、地上と同様の環境を作ります。この圧縮空気の噴射方法の検討・ウォータージェットとのバランスを図りながら地盤の切断能力の向上を図ります。
 
対象地盤に向けた形状:当社が施工の対象とする地盤は砂・粘土・砂礫その他多岐に渡ります。それぞれの地盤で切削効果・撹拌効果が異なることも明らかとなっており、それらに適した形状のノズルを使用することで高精度・高品質な地盤改良を行います。
 
 
 
 
②   自社開発(研究・設計製作・生産・試験)
①    に挙げた取り組みに基づいたウォータージェットノズルや圧縮空気用ノズル、それに付随する噴射装置といったものは全て自社で研究と設計製作をおこなっております。そして自社の生産拠点となるテクノセンターによって迅速かつ柔軟な生産に対応し、フィールド試験を経て実施工に投入されます。

 図4 ノズルの自社生産拠点【テクノセンター】


 
4.まとめ
ノズルの性能は、施工効率や改良体品質に大きく影響するため、材料の選定、表面処理、流体力学的な解析によるシミュレーションと内部形状の最適化が必要です。当社はこれらを利用した地盤改良工事を行うために様々な研究・設計製作・生産・試験等の多角的な技術を駆使してお客様のニーズにお応えできるよう日々努めてまいります。

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