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ICECRETE工法とは?自然冷媒を用いた地盤凍結工法の特長と用途

地下深くでトンネル同士を接続したり、シールドトンネルと立坑をつないだりする工事では、地下水の流入と地盤の崩落を防ぐため、地盤改良により施工箇所の止水性と安定性を確保しなければなりません。

しかし、大深度、高い地下水圧、硬質な地盤などの条件が重なると、一般的なセメント系の地盤改良工法では施工が難しい場合があります。
こうした地下工事の選択肢となるのが、地下水を凍らせて一時的に強固な凍土を造成する「地盤凍結工法」です。

ケミカルグラウトのICECRETE(アイスクリート)工法は、アンモニアと液化炭酸ガスを自然冷媒として使用する地盤凍結工法です。
本記事では、その仕組みや従来工法との違い、特長、用途、計画時のポイントを分かりやすく解説します。

この記事からわかること

  • 地下工事で止水と地盤の安定化が必要な理由
  • 地下水を凍らせて凍土をつくる「地盤凍結工法」の仕組み
  • 自然冷媒を使用するICECRETE工法と従来工法との違い
  • ICECRETE工法の施工性・環境性に関する特長
  • ICECRETE工法が適用される主な地下工事
  • 工法を計画・検討する際に確認すべきポイント

目次[非表示]

  1. 1.地下工事で止水と地盤の安定が必要な理由
  2. 2.地盤凍結工法の仕組み
  3. 3.ICECRETE工法とは
  4. 4.CO2を使用しても環境負荷の低減につながる理由
  5. 5.ICECRETE工法の主な用途
  6. 6.まとめ

地下工事で止水と地盤の安定が必要な理由

地下の地盤には、土や岩だけでなく、その隙間に地下水が存在します。

とくに大深度では地下水圧が高く、掘削箇所にわずかな隙間が生じただけでも、地下水が勢いよく流入する可能性があります
地下水とともに土砂が流れ込むと、最悪の場合、周辺地盤の沈下につながるおそれもあります(図1)。


図1 参考:博多駅前道路陥没事故の様子
出典:Muyo, "Hakata sinkhole 20161109.jpg", Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0
(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hakata_sinkhole_20161109.jpg)

代表的な場面が、立坑とシールドトンネル(地下トンネル)の接続工事です。

立坑とは、地下に掘られる縦型(垂直)のトンネルのことで、地下へ人や資機材を搬入したり、都市部の雨水を溜め込み、管理したりする役割のものがあります(図2)。

立坑の壁やトンネルの一部を開放する際、外側の地盤が十分に止水・安定化されていなければ、地下水や土砂が工事箇所へ流入する可能性があります。
その対策として、適切な地盤改良により、止水と地盤の安定化を図る必要があります。


図2 都市部の立坑やシールドドンネルのイメージ

地盤凍結工法の仕組み

地盤凍結工法は、地盤中に設置した配管(凍結管)へ低温の材料(冷媒)を循環させ、周囲の地盤から熱を奪う工法です。

地盤の温度を下げることで、土の隙間にある地下水を凍らせ、土と一体化した「凍土」を形成します。

地下水を凍らせるため、あらゆる地盤に対して、完璧な止水ができる点が最大の特長です
また凍土の強度は非常に高く、掘削時に地盤を支える役割を果たすこともできます。

施工では、凍結管を地中に設置して冷媒を循環させ、必要な厚さの凍土を造成します(図3)。
トンネル接続工事の終了後は、凍土を解凍させることで、地盤を基本的に元の状態に戻します。

セメント系の地盤改良と異なり、固化材などを地中に残さないため、将来の土地利用への影響を抑えやすいことも特徴です。

図3 地盤凍結工法のイメージ

凍土の造成状況を地中温度から把握しやすい点も地盤凍結工法の特長です。

一般的なセメント系の地盤改良工法だと、地中に造成される地盤改良の出来形の確認は困難です。これに対して、凍結工法の場合、温度が0度を下回ったら凍土が造成されていると判断できるため、地中に温度計を入れておくことで、出来形の確認が容易となります。

しかしながら、従来の凍結工法には課題もありました。それは、地盤を凍らせる材料としてフロン系冷媒を使用しているというものです。

言うまでもなく、フロンは温室効果ガスであり、その使用は制限されなければなりません。

ICECRETE工法とは

ICECRETE工法は、フロン系冷媒ではなく、自然冷媒を使用する地球環境に優しい工法として開発されました

具体的には、一次冷媒にアンモニア(NH3)、凍結管内を循環する二次冷媒に液化炭酸ガス(CO2)を使用する地盤凍結工法です。

ICECRETEは地球環境に優しいだけでなく、自然冷媒の材料特性により、従来工法よりも様々な点で優れています(図4、表1)。


図4 ICECRETEのメリット

表1 ICECRETE工法と従来工法の比較

比較項目

従来工法

ICECRETE工法

一次冷媒

代替フロン

アンモニア

二次冷媒

塩化カルシウム水溶液
(ブライン)

液化炭酸ガス

冷却温度

約-30℃

約-45℃

冷媒流量

毎分20~30L程度

毎分1~2L程度

プラント消費電力

約80kW

約50kW

メイン配管径

4インチ(約100mm)

2インチ(約50mm)

ICECRETEでは、土を冷やして凍らせる冷媒として液化炭酸ガスを用います。

このとき、液体として凍結管に送られた液化炭酸ガスは、地盤の熱によって徐々に気体へ変化しながら、また冷凍機に戻ってきます(図5)。

このような液体⇒気体という状態変化の熱を利用することで、従来工法よりも効率よく、地盤から熱を奪うことが可能です

5 ICECRETEの凍結システムのイメージ

また、冷媒流量(≒土を冷やすのに必要な材料の量)を従来工法よりも格段に少なくすることができるため、配管の小型化や冷凍機の小型化を実現しました。

とくに、凍結管のなかに挿入して冷媒を循環させる部材として開発したICチャンネルは、ICECRETEならではと言えます。
ICチャンネルは厚さ約5mmの扁平形状で、軽量かつ人間の力で容易に変形可能であり、現場での溶接作業なども不要なため、大幅な作業効率の改善を可能にしました(図5

さらに、冷凍機の小型化により冷凍機電力を抑えることができるため、電力コストの低減も実現しました。凍結工法の場合、凍土を維持している期間中、冷凍機の運転を続ける必要があるため、冷凍機電力を落とせるという点は、非常に大きなメリットになると考えています。


6 ICチャンネル

CO2を使用しても環境負荷の低減につながる理由

近年、脱炭素やカーボンニュートラルが叫ばれるなか、材料にCO2(液化炭酸ガス)を使用することに疑問を持たれる方がいるかもしれません。
しかしながら、以下の点から、ICECRETEは環境負荷の低減に貢献できる工法技術であると考えています。

  • ICECRETEで用いるCO2は事業排出ガスの再利用のものである

  • 従来工法のフロン系材料に係る温室効果ガス排出量は非常に多かった

  • 従来工法に比べて電力量を落とせることから、電力に係る温室効果ガス排出量を削減した

これらの点により、当社の自主算定では、従来工法に比べて温室効果ガス排出量を約30%の削減が見込まれる結果もでております。

ICECRETE工法の主な用途

ICECRETE工法は、地下水の流入を抑えながら、施工箇所周辺の地盤を一時的に安定させる必要がある地下工事に適用できます。主な用途は次のとおりです(図7)。

  • シールドマシンの発進・到達防護、地中接合

  • 立坑とシールドトンネル、トンネル同士の接続防護

  • シールドマシンの先端ビットの交換、テールパッキン交換時の防護


図7 ICECRETEの適用例

大深度、高い地下水圧、硬質な地盤などにより、セメント系地盤改良工法の適用が難しい場合に有力な選択肢となります。

一方、地下水の流れが速い場合は、周囲から熱が供給されて凍結しにくくなる可能性があります。

土質だけでなく、透水性、地下水位、地下水圧、地下水流速、必要な凍土厚さを総合的に確認することが重要です。
そのため、既存の地盤調査で判断できない場合は、追加調査などが必要となる場合もあります。

まとめ

ICECRETE工法は、アンモニアと液化炭酸ガスを自然冷媒として使用し、地下水を凍らせて止水性と地盤の安定性を確保する地盤凍結工法です。
効率的な冷却、設備・配管の小型化、専用凍結管ICチャンネルによる施工性向上、消費電力と温室効果ガス排出量の低減が期待できます。

環境負荷を低減できるだけでなく、狭小な地下空間での作業性や設備配置の自由度を高められる点も大きな特長です。
大深度地下、高い地下水圧、硬質な地盤などの理由から、止水や地盤改良の方法でお悩みの場合は、計画段階の情報でもご相談いただけます。