
大深度地下とは?都市インフラを支える地下空間と地盤改良の役割
都市部の地下には、鉄道、上下水道、電力、通信など、暮らしや社会活動を支える多くのインフラが整備されています。
近年は浅い地下空間の利用が進み、新たなインフラ整備のために、より深い地下空間が活用される場面も増えてきました。
その一つが「大深度地下」です。普段目にすることはほとんどありませんが、道路、鉄道、河川、上下水道など、都市機能を支える重要なインフラ整備の場として利用されています。
本記事では、大深度地下の定義や大深度地下法の概要を整理しながら、シールドトンネル工事を安全に進めるうえで重要となる地盤改良の役割について解説します。
あわせて、大深度地下に関連する工事での当社工法の適用例もご紹介します。
この記事からわかること
- 大深度地下とはどのような地下空間なのか
- 大深度地下法では何が定められているのか
- なぜ都市部で深い地下空間が活用されているのか
- シールドトンネル工事で注意すべき地盤・地下水のポイント
- 安全な施工を支える地盤改良の役割
- 大深度地下に関連する工事でのICECRETE・JETCRETEの適用例
目次[非表示]
大深度地下とは
大深度地下とは、一般的な建物の地下室や基礎として通常利用される範囲よりも、さらに深い地下空間を指します。
法律上は、次のいずれか深い方の地下が大深度地下とされています。

大深度地下の図
出典:国土交通省「 新たな都市づくり空間 大深度地下」、 PDL1.0
- 地下室の建設のための利用が通常行われない深さ 具体的には 地下40m以深
- 建築物の基礎の設置のための利用が通常行われない深さ 具体的には 支持地盤上面から10m以深
ここでいう支持地盤とは、高層建築物の基礎杭を支えることができる強固な地盤のことです。
つまり、単に「深い地下」というだけではなく、法律上の考え方に基づいて定められた、公共的な利用を想定した地下空間といえます。
大深度地下法とは
大深度地下法の正式名称は、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」です。
この法律は、公共の利益となる事業で大深度地下を使用する際の要件や手続きなどを定めたものです。対象となるのは、道路、河川、鉄道、電気通信、電気、ガス、上下水道など、公共性の高い事業です。
また、対象地域は全国すべてではなく、首都圏・近畿圏・中部圏の一部区域とされています。これらは、人口や都市機能が集中し、地下空間の利用が高度化している地域です。
深い地下空間は、通常、土地所有者などによる日常的な利用が想定されにくい領域であるため、公共性の高いインフラ整備を円滑に進めるための制度として、大深度地下法が整備されています。
ただし、法律上の制度があるからといって、無条件に使用できるわけではありません。対象事業であること、対象地域であること、公益上の必要性があることなど、一定の要件を満たす必要があります。
なぜ大深度地下が使われるのか
都市部の地下には、すでに多くの施設が存在しています。
地下鉄、共同溝、上下水道、電力ケーブル、通信管路、地下街、ビルの地下階など、浅い地下空間にはさまざまなインフラや構造物が集中しています。
特に大都市では、新たなインフラを整備する際には、既存施設との位置関係に十分な配慮が必要であり、建設工事の難易度も高くなります。
こうした背景から、より深い地下空間の活用が検討されるようになりました。
大深度地下を利用することで、地上部の用地取得や既存の地下施設との干渉を抑えながら、道路、鉄道、河川、上下水道などの重要なインフラ整備を進められる可能性があります。

都市部の地下イメージ図
出典:国土交通省「 新たな都市づくり空間 大深度地下」、 PDL1.0
もちろん、深い地下であればすべての課題が解決するわけではありません。
地盤条件や地下水の状況、周辺構造物との関係などを踏まえたうえで、計画段階から慎重に検討することが重要です。
大深度地下工事とシールドトンネル工事
大深度地下で行われる代表的な工事の一つに、シールドトンネル工事があります。
シールドトンネル工事とは、シールドマシンと呼ばれる専用の掘削機を使い、地中を掘り進めながらトンネルを構築していく工法です。
都市部の地下鉄、道路トンネル、下水道幹線、河川施設など、さまざまなインフラ整備で用いられています。

シールドマシンの例
出典:国土交通省「 新たな都市づくり空間 大深度地下」、 PDL1.0
大深度地下でのシールドトンネル工事は、地表から離れた深い位置で行われるため、地上への影響を抑えやすいという利点があります。
一方で、深い地下ならではの注意点もあります。
たとえば、以下のような条件を丁寧に確認する必要があります。
- 地盤の強度やばらつき
- 地下水の状況・地下水圧
- 発進立坑・到達立坑周辺の地盤条件
- 既設構造物や他の地下施設との位置関係
- 掘削時の地盤変位や周辺環境への影響
- 長距離施工における品質・安全管理
特に、シールドマシンが立坑から発進する箇所や、到達後に解体・回収される箇所、既設構造物と接続する部分では、地盤や地下水の影響を受けやすくなります。
目に見えない地下で工事を進めるからこそ、事前の地盤調査、施工計画、リスク評価、そして必要に応じた補助工法の検討が欠かせません。
安全な施工を支える地盤改良
シールドトンネル工事を安全かつ確実に進めるためには、地盤条件に応じてさまざまな対策・補助工法が検討されます。その一つが地盤改良です。
地盤改良とは、地盤の強度、止水性、安定性などを高めるために、薬液注入、高圧噴射撹拌、凍結工法など、現場条件に応じた方法で地盤を改良する技術です。
大深度地下工事において、地盤改良は主に次のような目的で活用されます。
ⅰ .止水性の確保
地下工事では、地下水への対応が重要です。特に大深度では地下水圧も非常に高くなるため、立坑周辺やシールドマシンの発進・到達部では、地下水の流入を抑えるために、あらかじめ地盤の止水性を高める対策を検討する必要があります。
ⅱ .地盤の安定化
掘削時に地盤がゆるみやすい場所や、地層の変化が大きい場所では、施工中の地盤安定性を確保するために地盤改良が行われる場合があります。
ⅲ .発進・到達部の補強
シールドトンネル工事では、シールドマシンが立坑から発進する箇所、または立坑へ到達する箇所が重要なポイントとなります。
これらの部分では、地盤や地下水の条件によって、止水性や安定性を高めるための地盤改良が計画されます。
ただし、地盤改良はすべての大深度地下工事で必ず行われるものではありません。
地盤条件、地下水条件、構造物の位置、施工方法、周辺環境などを総合的に判断し、必要な範囲・方法が検討されます。
大深度地下に関連する工事での当社工法の適用
大深度地下に関連するシールド工事では、発進立坑や到達立坑、既設構造物との接続部、シールドマシンの解体・ビット交換など、施工上の重要な局面があります。こうした箇所では、地盤の安定性や止水性を確保するため、地盤改良が検討されることがあります。
当社では、現場条件や施工目的に応じて、 ICECRETE(アイスクリート)や JETCRETE(ジェットクリート)を適用してきました。
ICECRETEの適用例
ICECRETEは、地盤を凍結させることで、止水性と地盤の安定性を確保する地盤凍結工法です。
対象範囲を確実に止水できることから、大深度地下に関連するシールド工事では次のような場面で活用されています。
既設構造物との接続防護
シールド発進・到達防護
シールドビット交換における防護
深度としては地下 70m クラスの施工実績があり、特に近年の豪雨災害対策のための雨水幹線整備事業などで、数多く採用いただいております。

シールド工事におけるICECRETEの適用例
出典:ICECRETE協会「ICECRETEリーフレット」に加筆
ICECRETEの詳しい説明はこちら:
JETCRETEの適用例
JETCRETEは、高圧で噴射される固化材スラリーと地盤を撹拌混合する高圧噴射撹拌工法です。地盤中に改良体を造成し、止水性や安定性の向上を図ります。
大深度地下のシールド関連工事では、次のような目的で適用されています。
- 立坑掘削時の盤ぶくれ対策
- シールド発進・到達防護
また、シールド工事以外の大深度地下関連工事でも、土留め欠損部の防護や遮水壁の構築などにJETCRETEが活用されています。
なお、地下60~70mクラスの大深度での施工実績もあります。詳しくは当社までご相談ください。
深い地下では、施工深度だけでなく、地盤条件、地下水条件、周辺構造物との関係など、複数の要素を踏まえた検討が必要です。単に「深い場所で施工できる」だけでなく、施工目的に応じて必要な性能を確保し、周辺環境への影響にも配慮した計画が重要になります。
当社は、ICECRETEやJETCRETEをはじめとする地盤改良技術を通じて、大深度地下に関連する工事の安全性・施工性の確保に貢献しています。
JETCRETEの詳しい説明はこちら:
まとめ
大深度地下は、都市部の限られた空間を有効に活用し、道路、鉄道、上下水道などの重要なインフラを整備するための貴重な地下空間です。
その一方で、深い地下での工事には、地盤条件や地下水条件を的確に把握し、施工計画に反映することが欠かせません。
特にシールドトンネル工事では、発進・到達、既設構造物との接続、地下水対策、立坑周辺の安定確保など、さまざまな場面で慎重な対応が求められます。
こうした施工上の課題に対し、地盤改良は止水性の確保、地盤の安定化、施工時リスクの低減に役立つ技術の一つです。
当社では、ICECRETEやJETCRETEを通じて、大深度地下に関連するシールド工事や地下構造物工事における地盤改良に取り組んできました。
今後も、現場条件に応じた技術提案と確実な施工により、安全で信頼性の高い地下インフラ整備に貢献してまいります。
参考文献:
・国土交通省「大深度地下利用」大深度地下利用 - 国土交通省
・国土交通省「大深度地下を利用するメリット」大深度地下利用:大深度地下を使用するメリット - 国土交通省
・国土交通省「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法の概要」大深度地下利用:大深度地下の公共的使用に関する特別措置法の概要(対象地域・認可の主な手続き) - 国土交通省
・国土交通省「新たな都市づくり空間 大深度地下」大深度地下利用:大深度地下使用に関するパンフレット - 国土交通省

