震度について (2)

新聞などで、地震のゆれ方の程度を表す時、ガルという単位がよく出てきます。例えば「2004年の新潟県中越地震では1000ガル以上のゆれで、新幹線が浮き上がり脱線した。」とか「原子力発電所の耐震基準は800ガル以上とする。」という具合です。この様にガルは地震のゆれ方と密接な関係があります。
ガルは加速度を表す単位で、加速度とは速度が大きくなる割合のことを言います。仮に時速10kmで走行している車に、1000ガルを持つ力が加わると、その車は1秒後に時速46kmになり、10秒後には時速370kmになります。1000ガルは、このように大きな値ですが、では、この値が大きいほど震度が大きくなり被害が大きくなるかというと、一概にそうともいえません。震度の大きさは、ガルの他にゆれの周期(往復時間)と地震の継続時間が関係してきます。


手の上のボール

図に示す手の上のボールは、重力によって980ガルという加速度を受けて、手の上に押し付けられてとどまっています。もし手がなければ、ボールは980ガルという大きさで加速しながら落下します。この状態から、手を上向きに十分早く動かし、重力を打ち消す980ガル以上の加速度をボールに与えることができれば、ボールを手の平から浮かせることができます。


ボールの浮き上がり


しかし、ボールの浮き上がり方は止めている手を動かす早さ(加速度)と、その時間の長さ(地震の振動周期に 相当)で変わります。(正確には動かしている手を止める早さも関係しますが、ここでは省略)。手を動かす速さが早いほどボールは高く浮き上がると 思えるのですが、動かす時間が短時間ならボールは大きく浮き上がりません。新幹線が脱線したのは、まず980ガル以上の加速度により車輪が線路から浮き、且つ周期が十分大きかったので、車輪が線路から外れてしまったと言えます。

整理すると、
地震のゆれ方は一方向への運動ではなく、行ったり来たりの往復運動です。加速度(ガル)が大きければ、ゆれは大きくなろうとしますが、加速度の働く向きがゆれの途中から逆向き(ゆれを止まる方向)に変わるので、ゆれが小刻みすぎると(周期が小さいと)ゆれの早さも、ゆれ幅も大きくなりません。一方加速度が小さくても、ゆれがゆったりしている(周期が大きい)場合は、ゆれの速さもゆれ幅も大きくなります。
ある 震度に対して、加速度の大きさと周期の関係を表すグラフが気象庁のホームページに載っています。このグラフによれば同じ震度7のゆれでも、ゆれの周期 が0.1秒であるときは、2700ガルの加速度が必要なのに周期が1秒では、その約1/5強の600ガルの加速度で十分ということになります。

周期および加速度と震度(理論値)の関係―均一な周期の振動が数秒間継続した場合

参考サイト)https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/kyoshin/kaisetsu/comp.html#fig4

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加速度の大きさと周期の関係

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