地震波の伝播速度

P波とS波の地盤内の伝播速度の違いを利用して、震源の場所を特定しています。
それでは、地震に縁のある、鯰をP波に、亀をS波にたとえて、震源から観測点までの距離を、楽しみながら鶴亀算で計算してみましょう。
計算の条件を、鯰は分速5m、亀は分速1mで移動し、鯰がA点に到着してから16分後に亀が到着するものとし、出発点からA点までの距離を求めます。


鶴亀算


最初に、鯰がA点に到着したときの亀の位置を計算します。亀は、鯰の16分後に到着するので、現在位置はA点から1x16=16m手前です①。
この時の鯰と亀の差は、両者が同時に出発してから、鯰がA点に到着するまでの両者の速度の違いによって生まれました。つまり、その速度の差に、A点に着くまでの時間をかけたものといえます。そこで、これを逆算し、かかった時間を求めると、16÷(5-1)=4分になります②。
鯰はA点に到着しているので、鯰の速度に、この時間をかけた5X4=20mが、出発点からA点までの距離になります③。

この様にして(?)、観測点から震源までの距離を求め、3箇所以上の観測点から震源までの距離を半径とする半球を描き、その面の交点を求めると震源の位置になります。

半球


それでは、地震波は地盤の中をどれくらいの速度で伝播するのでしょうか?地盤の種類や内部の割れ目などの物理的特性によって幅がありますが、花崗岩や玄武岩など硬い岩盤は、P波で700m/secから5000m/sec(時速2520kmから18000km)、S波では400m/secから3000m/sec(時速1440kmから10800km)とずいぶん大きな値になります。地球の直径が6378kmなので、地震が地球の裏側に直線的に伝わるとすれば、P波は22分、S波でも35分ほどで到着します。

砂や粘土など、私たちの生活により身近な土質地盤の場合は、岩盤に比べてやわらかいので、伝播速度は遅くなり、P波で600m/secから2000m/sec、S波で80m/secから400m/secの範囲になります。

このように、伝播速度が地盤によって決まっていることを利用して、地震波を地盤の調査に使っています。この調査方法を、弾性波速度検層、またはPS検層といいます。ボーリングによる調査をせずとも、地盤がどのような地層から構成されているかを、推定することができる優れた地盤調査方法です。さらに、地盤サンプル試験から得られた物性値と合わせて、地盤の機械的な値(ポアソン比・ヤング率・剛性率)も算出することができます。

以下に代表的な地盤と岩盤のP波速度を示します。

この中で、水のP波速度は実は1500m/sもあり、凝灰岩や砂礫と同程度の値です。普段は自由に流れ、硬さを感じさせない水も、場合によっては硬い物質であることが、この値が示しています。記録映画の高速ボートの横転事故で、ボートがバラバラになる様子や、水泳の飛込みで腹を打って痛かった経験など、なんとなく納得できませんか?


地盤と岩盤のP波速度

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