震源の深さの上限
前稿で、地震の震源は浅くて数kmと書きました。実際に地震が発生する、最も浅い深度はどの程度なのでしょうか?ご存知のように、地震は発生のメカニズムによって、プレート境界型、プレート内型、内陸直下型、そして火山性地震の4種類に分類されています。図は、発生タイプ別の地震の震源位置を示しています。発生場所とその発生メカニズムに若干の違いはありますが、基本的には、全て海洋プレートが大陸プレートの下に潜りこむ過程で、エネルギーが蓄積され、それが突然開放されることによって発生します。
このうち、火山性地震を除いて、最も震源が浅いとされているのが、内陸直下型地震(別名、大陸プレート内地震、内陸地殻内地震、断層型地震)です。阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震(M7.3*、最大震度7、震源の深さ16km))や岩手・宮城内陸地震(M7.2、最大震度6強、震源の深さ8km)などがこのタイプに含まれます。内陸直下型地震は、陸域で発生し、震源が浅いので、都市の直下で発生すれば大きな被害を、もたらす可能性が高くなります。しかし、大きくゆれる範囲は他のタイプに比較して狭いことが特徴です。
2010年1月12日に発生し、大きな被害を与えたハイチ地震(M7.0、最大震度7以上)も、内陸直下型地震で、阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)に似ていることが指摘されています。震源の深さは13km、被害の大きいポルトープランスから、震源までの距離は25kmという、直下型地震でした。このタイプの地震では、余震の多いことも、大災害になった原因のひとつでした。本震から2時間以内に、M5~M6の地震が実に5回発生し、また11時間以内にM4以上の地震が32回発生しました。過去200年で最も大きな地震であったとは言え、町が完全に倒壊して多くの犠牲者が出ている様子を見ると、お気の毒ではありますが、耐震対策の重要性を痛感いたします。
さて、本題に戻って震源の深度の上限ですが、京都大学防災研究所地震予知センターの研究によれば、琵琶湖周辺の大陸プレート内地震の震源の深さ(1976~2001年)は、上限が3km、下限18km程度であったとされています。また、東京大学地震研究所の東海道はるか沖地震の調査結果では、震源の深さは3.5kmから7kmの深さでした。調査した範囲では、震源が3kmより浅い地震はあまり無いようです。やはり地盤の役割の中には、「地震の伝播媒体」「災害を引き起こす(ゆれ)媒体」は入りますが、「地震の発生源」の役割は入らないようです。
*M;マグニチュードについては、後で説明します