地盤凍結工法その3
土を凍らせるために、どのような過程を経ているのか、施工手順を説明していきます。
まず、地盤を凍結させるために、凍結管と呼ばれるパイプを地中に埋設します。この際、写真のようにボーリングマシンという機械を使用して土に孔をあけていきます。その孔に凍結管となる直径10㎝程のパイプを埋設します。埋設したパイプの中にブラインと呼ばれる-20℃~-30℃の冷たい液体を送ります。ブラインは、低温でも凍らない液体のことです。凍結管は図のように二重になっていて内側のパイプを通して冷凍機から冷たいブラインが送られ、外側のパイプを通って凍結管の外側から冷凍機へと戻ります。地盤から熱を奪って温度が上昇したブラインは冷凍機へ戻った後、冷やされます。この時、熱は冷凍機内から高温水としてクーリングタワーへ運ばれ、水蒸気として大気中に放出されます。凍結工法で使用される冷凍機は、家庭用冷凍機の100倍以上の能力を持ちます。冷やされたブラインは、再び凍結管へ送られて、循環し続けます。埋設された凍結管の周囲が次第に凍り、やがて隣の凍結管も同様に凍っていくことで、隣り合った凍結管の周囲にできた凍土がつながります。隣り合うパイプの距離は、80㎝~100㎝で、凍土同士がつながって凍土壁を作るためには、冷凍機を10~20日間連続運転させる必要があります。上記の手順で、必要な範囲に凍結管を複数配置して、やわらかい土を凍らせて固い土に改良していきます。
凍結期間は造成期間と維持期間に分けられます。造成期間は、必要な範囲に凍土を造成する為の期間です。この期間は凍結管と凍結管の間の距離や、ブラインの温度等様々な要素を基に算出することもできます。造成期間で凍土が造成されても、その範囲の凍結を維持するために運転し続けます。維持期間中は、凍結部分が高い水圧や土圧から守ってくれるので本来作業が出来なかった場所での作業が可能になります。維持期間では必要のない範囲まで凍りすぎてしまわないように、測温管と呼ばれるパイプで温度を確認しながら、冷凍機の運転を制御します。測温管は凍結管から少し離れた場所に埋設されていて、深度ごとに温度計が設置されているパイプです。一度凍った土は溶けにくいため、工事完了後は凍結管に40~60℃の温水を循環させて、強制的に解凍する場合もあります。
上記は地上から真下の鉛直方向に凍土を造るための手順ですが、トンネルの中から凍結管を設置して、様々な方向や形状の凍土を作り出すこともできます。
ボーリングマシン(写真)
凍土壁(写真)