雑感

液状化 (1)

地盤は、砂やシルトや粘土などの様々な大きさを持つ土粒子が集まり、その土粒子間に地下水が満たされてできています。(地下水位以浅は、空気も入っています)通常は、この土粒子がしっかり、かみ合っているので、力を伝えることができ、その上を歩く人や建物の重さを支えています。

地震により、このような地盤が液体状になる現象を「地盤の液状化」といいます。液体状になった地盤は、水がそうであるように、上からの重さを支えることができず、地盤の中の軽いものは浮力で浮き上がり、また、水のように低い方に流れます。実際の被害で見ると、建物が傾いたり、地中のマンホールが浮き上がったり、堤防や土手の地盤が海側や低い方へ流れて変形したりします。

地盤が液状化するとは、地震動により土粒子のかみ合いが外れ、地盤内の地下水中に浮かんでいる状態になるということで、以下のようにその現象が起きると考えられています。

最初の段階では、まず、ゆるくかみ合っている土粒子が、地震のゆれにより、全体的に変形して密な状態に変わろうとします。この変形により、土粒子間の間隙が若干狭くなり、その分、中の水が押し出されようとしますが、逃げ場が無いので、粒子間隙を押し広げようという力(圧力)に変わり、この力で、しっかりかみ合っている土粒子のかみ合いも外れてしまい、土粒子が地下水中に浮かんだ状態、つまり液状化します。

次の段階では、液状化により、地中の自然な状態より圧力が高くなった地下水が、自然な状態に戻ろうとして起きます。この時、同じ地盤条件なら、水平方向や、深い方向より、地表方向の圧力が小さく、水は圧力の高い方から低い方に流れるので、浅い方向への流れ、つまり、地盤中に上向きの水の流れができます。この流れが土粒子を浮かせるくらいに十分大きい間は、液状化状態が続きます。そして、地表には墳砂という土砂の吹き出る現象が起きることになります。尚、地盤中の圧力が自然な状態に戻るには数十分以上かかるときもあります。

この説明から、液状化の発生しやすい地盤の条件は、

  • 土粒子の間隙が地下水で満たされていること
  • 土粒子がゆるくかみ合っており、かみ合いが外れやすいこと
  • 地下水が移動しにくい土粒子の構成(圧力が上がりやすい)になっていること

などで、埋立地、海や河川のそばの砂地、昔川や湖沼だった場所などが当てはまります。

話を戻して、
地震被害の中でマンホールが、液状化のせいで地表から突き出ている写真(前掲)をよく見かけます。コンクリートでできている重いはずのマンホールが・・・、と不思議な光景ですが、地盤の液状化により、下から大きな力が働き、マンホールが押し上げられてしまいます。

アルキメデスの原理を覚えておられるでしょうか?「液体の中に入れた物体には、その物体により押しのけられた(または、液体の中に浸かっている部分の体積の)液体の重さと、同じ力(浮力)が下から働く。」という原理です。

液状化した地盤は、水の1.8倍程度重いどろどろした液体になります。(液状化する前の地盤の重さと同程度か少し重い程度)アルキメデスの原理に従えば、押しのけられた液状地盤により、浮力が働き、その力は、水の場合より1.8倍重いので、1.8倍大きくなります。例えば、底の直径が1mくらいのマンホールが、3m地中に埋まっている場合で考えると、マンホールの重量が2トン程度であるのに対して、約4トンの力が、マンホールの底に下から働くことになります。

ついでに、もし間違って液状化している地盤に足を踏み入れたら? 水の重さを1としたら、人体は0.923~1.002(この割合を比重といいます)であるそうなので、ほとんどの人が水に浮き(?)、水面より上に出る部分は8%くらいになります。更に、塩分濃度が高く、体が浮きやすいことで有名な死海では、海水の比 重が1.3と、水の1.3倍もあるため、水面上に出る体の部分が30%程度になります。同様に、液状化した地盤の比重を、仮に1.8として、人の比重 を0.9とすれば、水に浮かぶ割合は50%(0.9÷1.8)となり、体の半分より多くは沈まないことになります。もちろん、液状化した地盤は、厳密 には液体ではないため他の要素も働き、沈まない部分はもっと大きくなると考えられます。とは言っても、濁水で地面が見えないし、地表面が大きく陥没し ていることもあるので、中に入る場合は注意が必要です。

  • オーダーメイドシステム

    機械・ツールスの小型化、改良体の径と強度を自在にコントロールするケミカルグラウトのオーダーメイドジェットシステム

  • 環境配慮型技術

    自然地盤との調和、CO2の排出抑制など環境に配慮する工法・技術紹介

  • 雑感

    地震や液状化、地盤凍結について、当社社員による雑感を掲載しています。

  • 技術論文

    当社の技術に関する各種論文紹介