液状化 (2)

液状化という現象は、1964年に発生した新潟地震で一躍有名になりました。それ以前にも知られていた現象でしたが、地面から土砂が噴出している映像や、アパート群が横倒しになっている写真など、新潟地震での衝撃的なニュースがその理由として考えられます。

日本列島は、大小様々の島からできており、活発な火山活動により、ほとんどの島の中央部に山地があります。山地から海までの距離が短いので、河川は急峻で、山地で洗掘した土砂をそのまま平野部まで運び堆積させるため、扇状地や三角州など、液状化の発生しやすい地形が多く存在します。


液状化の発生しやすい土地


近年こそ、堤防により河川の氾濫は減りましたが、昔から台風や集中豪雨により、多くの大規模な洪水が発生し、河川の流路も変わってきたため、かつては河底だった土地も多くあります。さらには、平野が国土の13%と非常に狭く、古くは農地の拡大を目的として、また近年では宅地や工場用地の確保を目的に、干拓や埋立てが全国的に行われてきました。
我々の祖先は、液状化のおきやすい土地を、宅地として利用することを経験的に避けてきましたが、近世以来の市街地の発展や拡大により、平坦な土地であれば区別なく利用するようになり、その結果、地震の発生に伴い、必ずといって良いほど液状化によって大きな被害が発生しています。
現在では、土地の改変やそこに建つ建造物、または河川の修復事業などによって、一見してわかり難くなっている土地の成り立ちに、液状化という視点で注意を払うことは重要なことです。
液状化の発生しやすい土地の地形的な特徴をまとめて見ます。
*イラストでは、土地利用の無い地形表現になっていますが、実際には、これら液状化のしやすい地盤の上に、盛土されその上に建造物が建っています。


液状化の発生しやすい地盤


液状化の発生しやすい地盤条件には、

  • 土粒子の間隙が地下水で満たされていること
  • 土粒子がゆるくかみ合っており、かみ合いが外れやすいこと
  • 地下水が移動しにくい土粒子の構成(圧力が上がりやすい)になっていること

があります。そして、そのような条件を持つ地形は、

河川上流域

高地を水源とする河川は、急峻な山地で土砂を洗掘し、平野部に出たところで流れが緩やかになり、水と一緒に運んできた大きな礫や土砂を堆積させ扇状地を作ります。扇状地では、河川の流れが比較的早く、大きな礫や砂からなる土砂が堆積するので、水が地盤に浸透しやすく、したがって、地下水位も低くなることから液状化はおきにくいとされています。しかし、緩やかな傾斜を持つ扇状地の平地側、特に湧水のある地域などは液状化する危険性があります。

河川中流域

河川の中流域では、土地の傾斜が小さいことで、河川周辺の地下水位が高くなっています。また流れが緩やかであるため、砂や泥など小さな堆積物がゆるく堆積しています。このような場所では、氾濫原(河川の氾濫によって、砂礫や泥が堆積して現在形成されつつある土地)や、河が蛇行してできる三日月湖の周辺、さらには蛇行部の湿地帯などで、液状化が発生する危険性があります。洪水の時に河道からあふれ出した氾濫水によって、流路の外側に運ばれた砂礫や泥が堆積してできた、河川に沿った微高地のことを自然堤防と言いますが、この自然堤防に続く背面湿地も液状化しやすい地盤です。

河川下流域

河川の下流域では、土地の傾斜はますます緩やかになり、水の流れが止まる河口では、砂や泥など小さく軽い粒子の堆積物がゆるく堆積し、三角州が形成されます。また、河道の変化により、古くは河底であった土地も多くあります。東京や大阪など日本の大都市には、古くから埋立地が造成されてきましたが、これらも液状化の危険性の高い土地です。

砂浜海岸

砂浜海岸には、嵐のときの高波によって砂礫が打ち上げられてできた、浜堤と呼ばれる細長い堤防状の高まりが続いています。砂礫が河川や海食岸などから多量に供給される海岸では、砂浜が成長して沖合いへ前進し、浜提が海側に徐々に何列も形成されて浜堤と浜堤の間に提間低地と呼ばれる細長い低地が生じますが、これも液状化する危険性があります。

潟湖

潮の流れに乗って砂が凸凹のある海岸線に沿って移動すると、砂嘴と呼ばれる砂の突起ができ、陸地との間に潟湖が発生します。この潟湖の周囲の低地も細粒物質からなる軟弱地盤で液状化がおきやすい地盤です。


最後になりましたが、以下に東京都の液状化ハザードマップを示します。
​​​​​​​このような液状化ハザードマップは、東京都に限らず各都道府県や市町村が作成したものを容易にインターネットで入手でき、お住まいの町の液状化危険度を確認できます。

液状化ハザードマップ


国土交通省提供:「ハザードマップポータルサイト」​​​​​​​:https://disaportal.gsi.go.jp/index.html
参考:「土のはなしIII」 土質工学会編 技報堂出版


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