雑感

地盤凍結工法その2

土の三相

地盤凍結工法の主役である凍土はその名の通り、土が凍ることでできます。「土が凍る」とはどういうことでしょうか?図は土の中を拡大した概要図です。通常、土は大きく分けて土の粒子(土粒子)、水、空気の三つの相から構成されています。土粒子の大きさや水の量、空気の割合が異なることでゴロゴロ、サラサラ、ぬるぬる、ふかふかと様々な土があります。中でも凍結工法が活躍するのは、地下水位以下の空気がほとんどない土(飽和土)に対してです。飽和土が凍結すると土粒子の周りの水が氷になります。この時、凍っていない水を不凍水と呼び、温度が低下すれば低下するほど不凍水の量は減っていき、土粒子の間は氷で埋め尽くされます。このように「土が凍る」とは、実際は土の中の水分が凍ることを表しています。

飽和土の凍結過程(概要図)

多くの人が知っている永久凍土も凍土のうちの一つです。永久凍土は北半球の全陸地のうち、約25%を占めています。日本にも標高の高い富士山等の頂上付近に永久凍土が確認されているようです。永久凍土は自然にできた凍土(自然凍土)で、地盤凍結工法のように人工的につくる凍土とは対照的です。

普段の生活の中では、永久凍土をはじめ凍土を見る機会はあまりありませんが、土の中の水分が凍る現象は冬の季節にしばしば見ることができます。それは「霜柱」です。霜柱は次の過程でできあがります。①気温低下によって土の表面の水分が凍る→②凍った部分の土が乾燥したような状態になる→③土の下層の水分が地表面へ移動する→④移動した水分が凍る(→②~④の繰り返し)

霜柱の出来上がる過程

地盤凍結工法では、凍土の様々な特徴を生かしています。一つは凍土の強度です。条件によっては、コンクリートと比較しても負けないくらい硬くなります。二つ目に凍土は水をとおさない性質があります。これは土粒子の間の水が凍ってしまうからです。また、氷は一度作ると融けづらいという一面も持っています。0℃の氷を融解するには、水を約80℃上げるのとほぼ同等の熱エネルギーが必要となります。以上のように、凍土の性質を生かすことで、他の地盤改良工法と遜色ない改良体を造ることができます。

他の地盤改良工法は、地盤に注入材やアルカリ性のセメント系固化材を注入することで地盤を補強します。一方で地盤凍結工法は何も注入することなく、凍結させるだけで補強の効果を得ることができます。凍土の効果が不要になれば、解凍することで地盤は元の状態に戻るため、地盤にやさしい工法と言えます。

参考文献:新版 雪氷辞典,日本雪氷学会編,2014

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